ArchiveSequencesTagsGlossary

Glossary

Exit

衰えていく組織や国家に対して、内側から不満を訴えて変えようとするかわりに、そこを去ること。

この区別を定式化したのは、経済学者Albert O. Hirschmanの1970年の著作『Exit, Voice, and Loyalty』。企業や組織や国家が衰えたとき、そこに属する人には2つの反応がある。去ることと、声を上げること。客は別の店で買い、党員は党を抜け、市民は国を出る。あるいは残って抗議する。Hirschmanは、経済学は前者を、政治学は後者を、それぞれ自分の得意な道具として扱ってきたと見た。

ネオリアクションは、この2つのうち去ることのほうに賭けた。Mencius Moldbugの構想では、世界は住民を奪い合う多数の小さな主権国家に分かれ、統治がまずければ住民は出ていく。投票で政府を変える必要はなく、政府のほうが住民を引き止めるために良い統治をする。Moldbugはそれを有徳の君主と邪悪な君主のたとえで書いている。

The virtuous prince should practice wu wei, and will; that is his nature. Men will flock to his kingdom and prosper there. The evil prince will commit atrocities; that is his nature. Men will flee his kingdom, and should do so ASAP before he gets the minefields in.

有徳の君主は無為を実践すべきであり、実践するだろう。それが彼の本性だからだ。人々は彼の王国に群がり、そこで栄える。邪悪な君主は残虐行為を犯すだろう。それが彼の本性だからだ。人々は彼の王国から逃げ出すし、彼が地雷を埋める前に、できるだけ早くそうすべきだ。

Mencius Moldbug, Nick Land "NRx and Liberalism", Outside in, 2016 での引用

Nick Landはこれを、議論の水準そのものを一段上げる原理として扱った。どんな社会が良いかを論じることは、合意が成り立たない以上、最終的には罠になる。問題は、意見の合わない者たちが別々の場所で、別々の統治のもとで、意見が合わないままでいられるかどうかだけだ。2014年8月の記事はこう結ばれている。

The objective is to divide the world, not to unify it in accordance with those principles best attuned to your preferences, however rationally or traditionally compelling such preferences might be. Universalism is the enemy. Don't do it (and to make a scholastic objection out of the universality of non-universalism, is to have immediately started doing it — check your totalitarian Hegelianism). Exit is not an argument.

目的は世界を分けることであって、自分の好みにいちばんよく合う原理に従って世界を統一することではない。その好みが、理性的に、あるいは伝統的に、どれほど説得力を持っていようとも。普遍主義は敵だ。それをやるな。非普遍主義の普遍性について揚げ足取りの異論を立てることは、その瞬間にもうそれをやりはじめていることになる。自分の全体主義的なヘーゲル主義をチェックしろ。Exitは議論ではない。

Nick Land, "Disintegration", Outside in, 2014

同じ記事のコメント欄でLandは、要点は強く異なる選好を持つ者たちとの関係で地政学的な外部性を獲得し、そのあと彼らに何が起きても自分の問題ではなくなるようにすることだ、と書き、ソドムとゴモラの話は素晴らしいExitの寓話だとも付け加えている。

Landは同時に、Exitには条件があることも強調した。Patri FriedmanのDynamic Geographyや、スタートアップ・シティ、チャーター・シティの構想は、政府の実験が許される善意の環境を前提にしていて、容赦ない敵との遭遇を想定していない、というのがLandの評価である。また民主的な市民権が地理的に持ち運べるかぎり、去った人々は去った先で同じ投票をするので、Exitは廃墟の投票に変わる。Landが分離的な断片化を最低条件と呼んだのはこのため。

参照

  • Albert O. Hirschman, Exit, Voice, and Loyalty: Responses to Decline in Firms, Organizations, and States, Harvard University Press, 1970.
  • Nick Land, "Disintegration", Outside in (xenosystems.net), 2014年8月4日.
  • Nick Land, "NRx and Liberalism", Outside in (xenosystems.net), 2016年3月23日.